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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(1)集団移住で漁村を形成した島

 ア 島の開発

 長浜町青島は地方(じかた)の長浜の北方13.5kmの伊予灘海上にある島である。
 寛永13年(1636年)に播州坂越(ばんしゅうさごし)村(兵庫県赤穂市)の与七郎なる者が年々大網を搭載して西国へ出漁していた。その時に島に潮がかり(潮の流れが逆向きの間、待機すること)した際、イワシの大群を発見し、網を引いたところ大漁であった。その後も毎年秋に青島で大網をひき大漁であった。大洲藩に島の網代(あじろ)の開拓を願い出て、寛永16年(1639年)に許可された。播州坂越村から一族を呼び最初16戸が入植した(㉗)。
 寛文7年(1667年)の『西海巡見志(④)』によれば、家数19軒、船数26艘、内3艘40石積より60石積まで23艘猟舟、加子数24人内5人役加子とある。
 村上節太郎氏の青島の観光診断報告書(㉘)によると、藩政時代の島の人口は、寛政4年(1792年)273人(ただし5歳以上)、文化8年(1811年)221人、嘉永5年(1852年)271人(ただし5歳以上)、文久4年(1864年)304人とある。
 島への移住過程を、島の真宗寺過去帳から昭和33年にまとめた結果から、A型として坂越村からの最初の移民、B型として地方(じかた)の長浜、上灘方面からの移民、C型中島等の島方などの島からの移民と、遅れての移民や分家によって青島の村落が形成されたことを知ることができる。さらに明治以降の島の人口の変遷から、戸数や人口が最大を記録するのは、戸数で昭和25年の155戸、人口では昭和17年の889人である。
 昭和初期から第2次世界大戦を経て戦後の昭和30年までの島の人口は800人を超えていたが、その後島の人口は急激に減少の一途をたどり、平成2年には昭和30年の10分の1以下となり、30歳以下の人口が1人もいない超過疎の島となった。

 イ 島の漁業の変遷

 青島は、イワシ網漁場として網代(あじろ)を開発した歴史が示すように、庄屋を網元とする網漁業を中心に発展してきた。
 庄屋所有の2統のイワシ網が、島民に売却されて明治21年(1888年)には共同経営となる。明治36年(1903年)に青島漁業組合が設立された。明治42年(1909年)にイワシ揚繰(あぐり)網と明治24年につくられたタイ縛り網を青島漁業株式会社経営としたが、昭和15年(1940年)には会社経営が不振となり、イワシ網の権利は漁業組合に、タイ縛り網は赤穂善三郎氏所有となった。昭和30年(1955年)にタイ縛り網は人手不足と営業不振で休業となった。昭和44年(1969年)には漁業協同組合の赤字打開のため、イワシ網は船団ごと福岡県遠賀郡芦屋漁協に売却され、330年続いた伝統あるイワシ網漁業もついに終止符を打つことになった。
 タイ縛り網とイワシ網は島民の経済を支える二大漁業であったが、これらの網漁業がなくなることによって、島の漁業はどのように変化したであろうか。島では戦前より男女とも出稼ぎに島外に転出するものが多かったが、とくに昭和30年後半からの人口流出は激しいものがあった。同時に島に残留した漁民は、網漁業依存の漁業からの家族労働を中心とした個人経営の漁業に転換していった。営んだ漁業種類別経営体数(表3-2-14~表3-2-18)からも、島の漁業の推移を知ることができる。過疎化の進行は一層島民の高年齢化をきたし、昭和63年のセンサス結果からも、島の漁業は老人による一本釣り漁業と刺し網漁業のほか採貝など腕力をあまり必要としない年寄りや婦人でも操業可能な漁業となり、経営規模も零細化した。青島は伊予灘海上にある孤島で交通面では不便であるが、反面漁場としては恵まれている。経営体の減少は漁業振興上の障害となるが、恵まれた漁場を自由に行使できるという利点もある。
 島に残っている人々の家庭は、子供や孫はほとんど島外に出ており、夫婦2人の家庭である。戦前、戦後の島の生活と現在の生活を比べてみて、受給される年金と漁業収入で現在は随分と楽であるという。
 漁獲された魚類は毎日午前4時と午後4時に漁協の活魚運搬船の生けすに集荷される。漁協の役員が計量し、3~4人の漁民が当番で集荷にあたる。前日の午後4時に集荷した魚と当日の早朝に集荷した魚を、運搬船で長浜漁協の魚市場の朝の競り市に間に合うように出荷している。

写真3-2-12 青島の集落と耕地

写真3-2-12 青島の集落と耕地

青島の集落、山腹中央の鉄筋の建物は廃校となった小・中学校。平成3年11月撮影

表3-2-14 経営組織別経営体数

表3-2-14 経営組織別経営体数

昭和38年~63年の漁業センサスより作成。

表3-2-15 青島の15歳以上の漁業就業者数の推移

表3-2-15 青島の15歳以上の漁業就業者数の推移

昭和38年~63年の漁業センサスより作成。

表3-2-16 営んだ漁業種類別経営体数

表3-2-16 営んだ漁業種類別経営体数

昭和38年~63年の漁業センサスより作成。

表3-2-17 漁獲金額別経営体数

表3-2-17 漁獲金額別経営体数

昭和38年~63年の漁業センサスより作成。

表3-2-18 青島の漁船隻数・動力船トン数規模別隻数の推移

表3-2-18 青島の漁船隻数・動力船トン数規模別隻数の推移

昭和38年~63年の漁業センサスより作成。