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遍路のこころ(平成14年度)

(2)遍路の宿と人々の交流⑨

 宿泊客全体の中で、遍路の占める割合(図表1-2-27)をみると、「80~100%未満」が23%(10軒)が最も多く、後は「5~10%未満」と「50~80%未満」がそれぞれ12%(5軒)、「10~20%未満」が9%(4軒)などと続く。御荘町の観自在寺、三間町の龍光寺、美川村の岩屋寺の各山門前や参道沿いの3軒の宿は、宿泊客総(すべ)てが遍路という遍路専門の宿であり、その内2軒は民宿である。
 遍路と宿の家族との交流について、食事面からみると、「家族といっしょ」は無く、「時々いっしょ」がわずか2%(1軒)と皆無に等しい。また、遍路と一般客の食事は違うかの問いには、77%(33軒)が「同じ」と答えている。また、宿での遍路同士の交流については、70%(30軒)が「行われている」と答え、「あまり行われていない」はわずか12%(5軒)である。さらに、宿の家族と遍路の交流(図表1-2-28)では、56%(24軒)が「行われている」と答え、「あまり行われていない」の35%(15軒)を大きく上回り、宿では人と人との交流が生まれている。
 地域の人たちと遍路の交流(図表1-2-29)は、交流が「ある」が33%(14軒)で、「ない」の25%(11軒)を上回り、遍路を地域の人たちが温かく包んでいる様子がうかがえる。
 「雑記帳」とは、宿に置かれた、旅や宿の感想などを自由に書くノートのことである。直接対話ができなくても、遍路と宿の家族、また遍路同士が心を開き、お互いの心の交流に大いに役立つものである。「雑記帳」の有無について(図表1-2-30)は、「置いていない」が60%(26軒)で「置いている」は19%(8軒)である。中予のある民宿では、ここ数年で大判の大学ノートが20冊を超したところもある。
 遍路と宿とのその後の交流(図表1-2-31)では、58%(25軒)が「ある」と答え、「ない」の37%(16軒)を大きく上回っている。その具体例として「礼状や暑中見舞い、年賀状を頂く」が群を抜いて多く、次いで「特産品やお土産などの送付や交換」、「写真の送付」、「遍路記など著作の送付」などがあがっている。
 さらに、特に記憶に残ったお遍路さんを宿主に何例かあげてもらった。その中には「娘さんが末期がんのため、回復を祈願して死装束の白衣を肌身はなさず身に付けてお参りしているという70歳代のご夫婦に話を聞かせてもらったこと」、「肉も魚もだめ、いりこダシのみそ汁やドレッシングもダメというお遍路さんがいて大変困りました」、「外国人のお遍路さんを泊めたこと。言葉は通じなかったが、身振り手振りで話をしたら十分通じうれしかった」、「四国八十八ヶ所を245回も巡拝した高松のお遍路さんで、その内90回目から245回までの156回、私の宿に泊まられたお遍路さんのこと。『おう、また来たぞ、泊めてや』と言って月に2、3度来るお遍路さんがいる」。さらに、「同じ方が2、3度来てくれる」とか、「毎年おいでくださる方とは家族同様のお付き合いをしている」など、その後も遍路と宿主との交流が続き、心温まる家族的雰囲気を醸(かも)し出している。

図表1-2-27 宿泊客全体で遍路の占める割合

図表1-2-27 宿泊客全体で遍路の占める割合


図表1-2-28 宿の家族と遍路の交流

図表1-2-28 宿の家族と遍路の交流


図表1-2-29 地域の人たちと遍路の交流

図表1-2-29 地域の人たちと遍路の交流


図表1-2-30 「雑記帳」の有無 

図表1-2-30 「雑記帳」の有無 


図表1-2-31 遍路と宿のその後の交流

図表1-2-31 遍路と宿のその後の交流