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遍路のこころ(平成14年度)

(2)四国八十八ヶ所霊場周辺の新四国①

 新四国には、大島島四国や小豆高島四国のような広範囲にわたる霊場が開創されている場合もあるが、札所をはじめとする四国霊場の周辺に石仏を配した「ミ二四国」(ミニ霊場)とも称される新四国もある。その霊場周辺の新四国のうち、四十番観自在寺周辺の御荘新四国、五十一番石手寺裏山のお山四国、それに六十五番三角寺奥之院仙龍寺裏山の清瀧新四国を取り上げ、その概要を整理した。

 ア 観自在寺の御荘新四国

 宇和島市から国道56号を南に約50km行った所にある、約9,700人(平成14年現在)の人々が主に農業や水産業で生計を立てている御荘(みしょう)町には四十番観自在寺を起点と終点にした「御荘新四国」がある。

 (ア)御荘新四国のおこり

 御荘新四国の起点となっている観自在寺の1番本尊石仏の正面台座(写真2-2-21)には、新四国の設立の趣旨が刻まれており、日本民俗学会員の藤田儲三氏は、次のように読み下している。

   夫レ仏ハ信仰ニ依テ其威ヲ益シ而シテ人ハ其徳ニ感ス空海上人四國ニ八十八箇ノ霊場ヲ開キ給ヒシ以来衆生信仰日ニ厚
  ク月ニ増シ香華ノ絶ユル間ナシ蓋偶然ニ非ラサルナリ茲ニ於テカ普ク霊場ニ口シ仏徳ニ浴セントスル者多ケレトモ或ハ年
  老或ハ不可能ノ情實アリ詣拜スルコト能ハサル者尠カラサルヲ遺憾トシ不敏発企(ママ)群内ニ新四國ヲ設ケ是等信仰者
  ノ願イヲ貫徹セシメントシ大正口年口月起工シ幹事ノ補佐世話人ノ尽力有志者ノ賛助ヲ得テ爰ニ大正七年口月竣工シ佛光
  ヲ拜スルコトヲ得乞フ信仰者諸氏之ヲ諒トセラレンコトヲ聊敍シ以テ設立ノ趣旨ヲ述フ

これによると、開創の年が大正7年(1918年)であることがわかる。

 (イ)巡拝路

 御荘新四国は、観自在寺境内に1番と88番の本尊石仏があり、僧都(そうず)川の土手から長崎地区を経て、観自在寺の裏山にかけて本尊と弘法大師像の石仏が一対で祀(まつ)られているものが多い。巡拝には約3時間半を要する。まず、門前左の2番石仏(写真2-2-22)から坂道を下って県道293号(猿鳴平城線)を渡り、観栄橋の手前を右折して僧都川右岸の土手を進むと、御荘大橋までに3番から6番までの石仏が右手にある。その後、御荘大橋たもとの国道56号を渡って進むと僧都川の河口までに14番までの石仏が土手に祀られている。さらに、南予レクレーション都市公園の施設を右に見て進むと長崎集会所までに15番から21番までの石仏が右側土手に点在しており、その中には文政4年(1821年)に建てられたものがある。御荘町指定文化財に指定された長崎地区の常夜灯横の22番には5基の石仏がまとめて祀られている(写真2-2-23)。
 長崎集会所近くの23番を過ぎて、国道56号を渡り、町立長崎保育所前を過ぎると24番には4基の石仏が祀られている。野道に点在する25番から27番までの石仏を見て、28番を左折すると町営住宅前に達する。29番から31番の石仏が置かれた住宅街を過ぎると、野辺の道に32番から36番の石仏が点在する。松軒山(しょうけんやま)に上る道を横切り、左手の37番を過ぎると38番石仏に至るが、この石仏は遍路道から右にそれたみかん山にある。その後、民家のそばにある39番・40番石仏を過ぎると、来迎寺境内入り口に41番が、また、興禅寺山門左手には42番の石仏がある。
 さらに進んで雑貨店の角を左折すると、八幡野(やたの)町営団地横に43番石仏があり、ここを過ぎると山道に入る。44番石仏を左に見て、雑木林の中を上がると三差路に46番石仏があり、左折するとすぐに47番石仏に達する。45番石仏をお参りするには、ここから左折して谷を逆戻りする。再び47番石仏に戻って簡易舗装の道と自然林の中の道をしばらく上がると48番石仏に達する。ここから、倒木や岩が露出した急な坂道を上がる間に49番から51番石仏が杉林の中にある。さらに、つづら折りの急な坂道に52番から56番の石仏が点在している。谷筋の険しい道を過ぎて、左斜面の緩い山道をしばらく進む間に57番と58番石仏がある。さらに進むと尾根道に至り、やがて椎(しい)の大木のある広場に達するが、ここに59番石仏がある。ここからは、かつて御荘町の街を望むことができたので、巡拝者の休憩場所になっていたというが、現在は周辺の杉が成長して街が見えにくくなっている。しばらく進んだ道の右手に大きな60番の石仏があり、さらにシダの生い茂る緩い下りの坂道に61番から70番までの石仏が点在する。その間には68番と69番の石仏が岩の上にまとめて祀られており(写真2-2-24)、この辺りの道はシダを刈って整備されている。その後、シダの茂る急峻な道を74番石仏まで下ると舗装道路に出る。その手前の金刀比羅(ことひら)神社の裏手に75番から80番までの石仏が点在しており、この辺りから御荘町の街並みを望むことができる。その後、少し下った民家の周辺の81番から83番石仏を過ぎると町立御荘保育所に至るが、ここには84番と85番の石仏がある。その後、民家の中の86番と観自在寺右手の87番石仏を過ぎると境内に着く。

写真2-2-21 設立の趣旨が刻まれた石仏

写真2-2-21 設立の趣旨が刻まれた石仏

権自在寺境内に1番と88番の本尊石仏が立っている。平成14年11月撮影

写真2-2-22 権自在寺門前の2番石仏

写真2-2-22 権自在寺門前の2番石仏

平成14年11月撮影

写真2-2-23 長崎地区の石仏群と常夜灯

写真2-2-23 長崎地区の石仏群と常夜灯

平成14年11月撮影

写真2-2-24 岩の上に立つ石仏

写真2-2-24 岩の上に立つ石仏

左の二体が68番、右の二体が69番。平成14年11月撮影