データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

遍路のこころ(平成14年度)

1 遍路道の整備

 森林インストラクターの資格を持つ愛知県の**さん(昭和44年生まれ)は、会社を退職するのを機会に初めての四国遍路に出て、平成14年5月7日から6月24日まで49日をかけて八十八ヶ所と番外霊場20か寺を歩いて巡拝した。その**さんは遍路道への思いを次のように語っている。
 「車や自転車で回ることに比べると、歩いて回るときは、様々なことをじっくりと見たり、聞いたり、考えたりすることができるものです。歩き遍路にとって次のような道作りをしていただければ、この上ないことだと思います。
 まず一番に感じたのが、擬似木による中途半端な階段はとても歩きにくいということです。愛媛県内では小松町の横峰寺に上がるまでの道がそうでした。どうしても擬似木の階段を作るならば、歩くことに考慮した幅と高さにされたほうがよいと思います。できればこれ以上増やさないよう願うばかりです。
 愛媛県内は高知からの松尾峠をはじめ、歯長(はなが)峠や鳥坂(とさか)峠、鴇田峠(ひわだのとう)などたくさんの峠道がありました。どの峠も『乗り越えた』という実感があって、とても印象深い道でした。今は、ほとんどの峠は下にトンネルがあるようですが、トンネルの歩道は狭い上に、すぐ横に壁があるので、歩くのも怖いですし、車を運転する方にとっても私たちに気を遣うのではないかと思ったので、私はなるべく、峠越えの道を選択しました。峠を歩くのはとても気持ちがいいです。エンジンやクラクションの音はまったく聞こえません。静かに歩くにはもってこいの道です。そのような旧遍路道を整備、充実してほしいものです。簡単な休憩所とか、トイレがあればもっとよいのですが。交通量の多い国道などは歩道をしっかりつけていただければと思います。私たち歩き遍路だけでなく、地域の人たちの安全にもつながると思います。
 私は森林インストラクターの資格を持っておりますが、森を歩いていると鳥のさえずりなどを聞いてその声に森の命を感じて心を癒(いや)されます。森の命を感じて心が癒されるような遍路道、歩ける道が多くあってほしいものです。」
 このような遍路たちの思いにこたえる形で歩きやすい遍路道整備の試みが各地で始まっている。