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えひめ、人とモノの流れ(平成19年度)

(5)中島大会の魅力ともたらしたもの

 大会事務局の**さんは、「今年はトライアスロン関係の月刊誌(①)にも満足度の高い大会の『全国ベスト10』にランキング入りしたことも影響しているのでしょうか。例年以上に応募者が多く、うれしいやら苦しいやらといったところです。というのも、島にやってきてくださいと呼びかけているにもかかわらず、受け入れ人数には限度があり、コンピュータによる無作為抽出で選考から漏れた方には出場をお断りしなければなりません。これは何より心苦しいことです。そして4年連続で抽選漏れとなったり、連続出場ができなくなったりした選手の方も少なくないのです。
 かつてはたくさん民宿があり選手の受け入れ人数には余裕がありましたが、10回大会ごろから、宿主の高齢化や後継者不足の問題がでてきて、約200人程度の宿泊先がなくなってきています。そういう事情から宿泊先の確保策として以前のように大会関係者ばかりでなく一般の御家庭にもホームスティの受け入れをお願いしています。余裕を持って宿泊先を確保できれば、募集定員を増やすことが可能ですが、現状では今年度のように420人程度がやっとというところです。しかし、何がそんなに選手たちをひきつけているのでしょうか。私たちにはわかりません。宿泊先では部屋が狭くて掛け布団の境が重なるほどの状況だし、夏の寝苦しい時期にもかかわらず…。」と話す。
 このように事務局を悩ますほどの出場希望者数の多い中島大会に対して、そこに集う選手や関係者に中島大会の印象や魅力を聞いた。福岡県から参加した40代の男性は「20代のころから各地の大会に出場してきましたが、中島大会はトライアスロンという競技が日本に入ってきた20数年前のいい雰囲気が残っていると思います。前夜祭もその一つですね。平成に入ってから、経済的な事情から自治体や競技実施団体主催の大会が取りやめになったところが増え、私の知っているものでも全国で20近くの大会がなくなりました。平成の合併以降、中島のような『ショートの大会(*5)』では、出場者数200人というのが大きな壁で、実は超えられない大会の方が多くなっています。だから中島のように400人以上の選手が出場する大会は珍しく、まして出場者を抽選で絞り込まなければいけないほど人気のある大会は本当に珍しいのです。さらに中島大会は地元愛媛県からの出場者が多いことも特色の一つだと感じています。他県の大会では県内の選手だけでは人数が集まらないから県外の選手にも募集を掛けなければならないという事情を抱えているところが少なくないのです。」と話す。
 京都府から参加した50代の男性は、「競技仲間の中では、いくら鉄人レースに出たといっても『ショートの大会』に出ていなければ、『一人前の鉄人』として認められないようなものがあるので昔から出てみたかったのですが、近畿圏内にはなかなかそういう大会がありませんでした。そこで昨年初めて出場したのです。今回が2回目で、出場するのは私ですが夫婦で来ています。出場希望者が増加している背景には、地元の方の応援のすばらしさもさることながら、大会の出場条件に協会への登録や団体への加盟などといった縛(しば)りがなく、個人でのエントリーのしやすさがあると思います。」と話す。
 また、岡山県から参加した30代の女性は「6年ぶりの出場ですがその当時と変わらずのんびりとした雰囲気が中島にはあります。中島のコースは平坦部の多いのが特徴で、やっぱり沿道の皆さんの応援がありがたいですね。バイクのときには、民家の多い集落のところにやってくると往路では『ようきたね。』、そして復路では『来年もまた来てね。』という声をかけてもらうのです。ランのコースでは、沿道で応援してくださる地元の方が自宅からホースを引っ張ってきて、その水を走っている私たちにかけてくれるのです(写真4-1-7参照)。その水は本当に気持ちよく、だからがんばりきることができると思うのです。また何よりありがたいのはゴールするときに選手とその家族も一緒にゴールできることです。家族でゴールさせてくれるだなんて、これには感激しました。」と話す。
 **さんは、「大会実施前の中島は、『みかんの島』とか『海水浴場』といったイメージしか持ってもらえなかったのではないかと感じていましたが、現在ではマスコミやトライアスロン情報誌などでも頻繁(ひんぱん)に取り上げられ全国的に瀬戸内海の中島をメジャーにした効果は大きいと思います。私たち職員の名刺にもトライアスロンの写真を入れてPRしていますし、少なくとも県内の方には、中島をすぐわかってもらえるようになりました。この大会の運営を通じて、なかなか数字に表れるような効果というのはつかみにくいのですが、間違いなく中島の知名度は上がったと感じています。大会の運営にかかわってきて、毎年準備や後片付けなどとても大変なわけですが、選手たちがゴールするシーンを見ると、また来年もやろうかという気持ちになります。こうやって毎年続いてきたし、もちろんこれからもずっと続けていきたいと考えています。」と話した。


*5:ショートの大会 トライアスロンでは距離設定で呼称が分類されている。ショートとは、水泳が1.5km、自転車が
  40km、ランニングが10kmの総距離51.5kmで競われるトライアスロンの呼称である。平成12年(2000年)開催のシド
  ニーオリンピックでトライアスロンは正式種目となり、その際の距離設定もこの距離となったため、別名オリンピックディ
  スタンスともいう。中島大会では島内の地形や道路事情を考慮して、1回目は水泳1.5km、第1ランニング2.5km、自転
  車54km、第2ランニング14km、総距離72kmで実施した。その後見直しを重ね、7回大会(平成4年〔1992年〕)以
  降ショートの距離で実施している。

写真4-1-7 沿道からの声援と水しぶき

写真4-1-7 沿道からの声援と水しぶき

ゴールを目指す選手たち。松山市小浜(中島)。平成19年8月撮影