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えひめ、人とモノの流れ(平成19年度)

(2)年々増える来訪者

 ア 順調な受け入れ実績

 しまなみGTへの来訪者数は協議会設立後の平成13年度にはわずか459人であった。その後順調に伸びを続け、平成18年度には11,600人超へ躍進している。このようにしまなみGTが大きな成果をあげている背景について、協議会設立以来、その支援に取り組んできた県今治地方局農政普及課しまなみ農業指導班に聞いた。
 「年を追うごとに体験メニューへの受け入れの数は順調に増え、平成18年には1万人を超える多くの皆さんがしまなみGTを体験してくれましたし、リピーターの方も着実に増えています。その中には自分たちの地域にもぜひ来てくださいといってくださる方もいらっしゃるし、一度来られた方が、友人知人を誘って再び来られたりという具合で、顔なじみになった方も増えてきております。帰り際に『また来ます。』と言ってくれる方が多くなると本当にうれしいものです。
 現在のしまなみGTは69にのぼる豊富な体験メニューがあります。そして、事務局としては、なんといっても『しまなみらしさ』をアピールしながら、お客さんがいつまでも来ていただける息の長いものとなるような体制づくりを整備しておく必要があると感じています。私たちとしては協議会を支援する側ですが、しまなみGTが成功したのは、やはり地域の生活研究グループの皆さんが競い合うように地域資源を生かした体験メニューを作ってきたことをはじめとして、積極的に取り組まれてきたからだと感じています。そして、協議会設立当初からかかわってこられた生活研究グループの方が、どちらかというと御高齢になられてきましたが、その後を新会長になられた西部さんのように若い世代の方々が引き続けてくださっていることを非常にありがたく感じています。
 しかし、現在は協議会のホームページを見た個人や団体、あるいは旅行業者などからの問い合わせを受けてから動いている状況で、いわば、こちらが『待っている。』状態です。そうではなく、今後はもっと積極的にこちらが『前に出て行く。』状態にしていきたいと感じています。ですから、情報発信にしても、テレビや情報誌などのメディアを使ってもっともっとPR活動を強化したいと考えています。また、協議会としては会員の皆さんの声を聞きながら、受け入れ人数のバランスの取れた体験メニューを事務局と協議会役員とで検討していく必要があると考えています。また、当初は平成12年の協議会設立後、5年程度で組織の自立化を目指すべきでありましたが、なかなか難しく進んでいません。そこであと2年くらいかけて自立した組織として独り立ちできるように支援していきたいと考えています。」と話す。

 イ 修学旅行生も受け入れて

 しまなみGT協議会では、平成14年度~18年度までに約2,400人の修学旅行生を受け入れ、様々な体験メニューを提供している。修学旅行の誘致策やその様子について聞くと「これまでを振り返ると、受け入れの多い年には五つの学校が来てくださっていますし、大阪府の羽曳野(はびきの)市立高鷲南(たかわしみなみ)中学校さんのように平成14年から毎年来られていて、今年度で6回目となったところもあります。すでに来年の予約をされた学校もあります。関東方面からも来られていて、生徒数が100人を超える場合もありますが、一つの体験で受け入れることが可能な人数は限りがあり、しまなみ地域の各施設に分散していただける形で受け入れています。
 過去には広島方面に出向いて行って関係者に私たちのGTについてプレゼンテーションをしたこともありますし、修学旅行に限らず、団体旅行の受け入れを研究するために旅行業者の方を招いたり、今治(いまばり)NPOサポートセンター(*16)の企画によるモニターツアーを実施したりしてきました。業者としては手数料収入などのメリットがなければいけないでしょうし、また修学旅行のように一度に多くの生徒を受け入れる場合には、万一の事故に備えた体制を今以上に整え、安心・安全なものにしておく必要があることや、様々な旅行商品にしていくには、今後のさらなる研究が必要という御指摘をいただいています。問い合わせには一度にどれくらいの人数まで対応が可能なのかとか、車椅子を利用することができるのかどうかといった問い合わせものもあり、長期的に受け入れを継続させていくためには、旅行業者さんから指摘された点も含めて整備が必要な課題があると考えています。」と話す。
 実際の受け入れの様子について**さんは、「平成14年に東京都江東(こうとう)区立深川(ふかがわ)第四中学校の修学旅行(3年生171名、引率教員15名。)を受け入れたのが最初です。受け入れは、旧魚島(うおしま)村を除く旧8町村(吉海(よしうみ)町、宮窪(みやくぼ)町、伯方町、弓削(ゆげ)町、生名(いきな)村、岩城(いわぎ)村、上浦(かみうら)町、大三島(おおみしま)町)で行い、体験メニューとしてタコ飯、タイ飯、五目飯、釜飯づくりからはじまって出しすぎるぐらいの体験メニュー(全30種類)を用意しました。伯方で40人余りを受け入れましたが、人数も多いうえに初めてということで、とても戸惑いました。段取りにも不手際があったりして大変でしたが、都会からやってきた子どもたちにとっては、島でのことはなんでも珍しく、タコ飯作りをした子どもたちも喜んで帰ってくれました。そういった姿を見ることができるのが一番うれしいのです。」と話す。

 ウ 農家レストランを運営して

 GTでは様々な体験メニューが提供されるばかりでなく、農林漁業者が経営する「農家レストラン」も開設されている。そこでは農林漁業者が自ら生産(収穫)した食材や地域の特産物を生かし、自分たちが調理したその土地ならではの料理を提供し、来訪者をもてなしている。県内でも平成19年現在で8か所開設されている(*17)。しまなみ地域には地元特産のレモンを使った「レモン懐石(かいせき)」を提供する「でべそおばちゃんの店」(越智(おち)郡上島町岩城)と、**さんが運営しタコ飯が看板メニューの「有津っ子」、そして、**さんたちが運営している「愛の地産地消レストラン」がある。
 **さんは「私たちが運営している『愛の地産地消レストラン』は、伯方島の道の駅『マリンオアシスはかた』の2階で営業しています。営業日は県が実施している地産地消の日にあわせた毎月の第4土、日曜日です。運営メンバーは13人で、地元の食材を使った料理を堪能(たんのう)していただこうと毎回みんなが意見を出し合いながらやっています。回を重ね、今ではスムーズな運営ができるようになってきたと感じています。島内のお客さんには、毎月来てくださる常連の方もできましたし、『次を楽しみにしとるんよ。』といってもらえると本当にやりがいを感じます。
 現在は月末の土日だけで営業していますが、もっと島外のお客さんが増えてくれば、営業回数も増やしてみたいと考えています。しかし、準備と営業で確実に3日間は取られますから、あまり回数が増えてしまうと本業の農業への影響が大きくなりますので、このあたりが難しいところです。でも、来ていただく方に、『あの日しかやっていないけど、あの店でしか食べられない。』というものを提供していきたいのです。また、畑を整備して、そこで穫れたものを使った体験メニュー作りもしていきたいです。」と話す。


*16:今治NPOサポートセンター 今治市に活動の本拠を置く民間非営利団体(NPO)の運営や活動に関する助言や援助
  の活動を行い、各NPOのネットワークの拠点としての役割を果たすことを目的に平成14年(2002年)に設立。
*17:県内の農家レストラン しまなみ地域以外では、「もみじのとまや」「ももくり三年、かき八年」(西条市丹原町)、
  「こぶしの家」(伊予郡砥部町総津)、「森の魚」(西予市野村町大野ヶ原)、「畦道の花」(宇和島市三間町)があ
  る。