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宇和海と生活文化(平成4年度)

第3節 漁家とくらし

 1項で佐田岬半島の岬端に位置する三崎の漁業と漁民の生活についてみてみることにする。この地域は愛媛県下で唯一の海士のムラであり、海士による潜水漁業とともに、速吸瀬戸(豊予海峡)を漁場とする一本釣り漁業の地域である。速吸瀬戸をはさんで、漁労技術や生活伝承の交流による人びとの生活文化について考察してみたい。海士や一本釣り漁師や主婦から、昭和を生きてきたムラの変容について、漁業協同組合運動という視点を加えて、聞きとりを中心にまとめることとする。
 2項ではリアス式海岸の三瓶湾の人びとは、三崎の海士や一本釣り漁業とは異なり、網漁業を中心として生きてきたムラであり、明治以降漁場を沿岸から沖合へ、さらに遠洋へと拡大していった状況、その過程で三瓶の漁業の存亡の危機の試練を経験しながら、それを克服していく漁民魂というものを、さらに沿岸漁業から養殖業に転換していく過程についてまとめてみたい。聞きとりから当時のエピソードや海に生きる人びとの心情というものにもふれたい。
 3項ではこの地域の漁村の伝承について、エビス神を中心にまとめたい。戦後の社会の急激な変化や漁業の近代化は、漁村や漁民の伝承や習俗が消失しつつある。漂着するもの、寄りきたるものに対する信仰や伝承を記録として残したい。