データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

宇和海と生活文化(平成4年度)

(2)おしょろ船の材料

 大久の**さんに聞いた「おしょろ船」の習慣は、シタテの大久、川之浜のほかに、ウワテの大江にも残っている。おもしろいことに、おしょろ船を作る材料がシタテとウワテで違いがあることが分かった。「シタテ(大久)のおしょろ船は、麦わらで作る」と、**さんに聞いていたが、ウワテ(大江)のおしょろ船は稲わらで作られると言う。これは、農業と関係があるようで、先述のように、米作りが行われていたのは瀬戸町ではウワテのみである。したがって、身近に豊富な材料として、ウワテでは稲わらを、シタテでは麦わらを用いているのだ。個人の好物を船に乗せて流すのは共通しているが、川之浜にある八多喜寺の**さんに聞くと、シタテではお菓子やお酒などを「ずだ袋」にいれて船に乗せるそうだが、**さんに聞いた話では、「大江のおしょろ船には、サトイモの葉でお供えをくるんで、麻の木の皮をむいたのでしばってのせる」そうで、南北では多少趣きが異なるようだ。また、ウワテではおしょろ船を「ヒロシマ(洋州)へ流す」と言うらしいが、この点に関してはどういう意味なのか今回の調査では解明できなかった。