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わがふるさとと愛媛学   ~平成5年度 愛媛学セミナー集録~

7 地方色豊かな音楽を、郷土文化として定着させよう

 『愛媛の民謡』という本の中には、「慶長13年(1608年)、本山六之丞が藤堂高虎とともに伊勢の安濃津に移り、築城の際に広めたよいやな節が伊勢音頭の母体になったと、今治地方では伝えられている。」ということが書いてある。確かに伊勢音頭調だが、謎は深くて、私は疑問を持たざるを得ない。
 作業歌から、盆踊り歌の方に変遷した木山音頭は、県内各地で流れている。もちろん「木山音頭」の曲名は同じも、木山六之丞が那須与一に変わったり、それから忠臣蔵に変わったり、いろいろ文句や節が変わって点在しているのが面白い。
 踊り方も地方によって随分違う。今日、各地で見られる盆踊りの形態は、ほとんどが、別の歌や踊りから、流用したり模倣したと思われる。文献によれば、太鼓や鐘を鳴らして田畑の害虫を追う行事、お盆の時無縁仏を村外れに送り出す行列形式の踊り、先祖を供養する念仏踊りなどが流用されている。地方ごとの変化から娯楽性と地域性が感じられて面白いと思う。
 今の盆踊りは、信仰から娯楽へと変わっているので、振り付けも現代風にアレンジされ、時代の流れを感じるが、私はこれでよいのだと思う。ただ、生活に密着してできた民謡や盆踊りは素晴らしい文化遺産であるだけに、それを受け継いでいる者としては、人々が「ふるさとのにおいや味、ふるさとの心」を感じ、郷愁を誘って集まるものでないといけないと思う。
 また、人々がそのように集まってくるためには、伝統的な文化を掘り起こし、それを土台に新しい文化を作り上げることが必要だ。私の仲間で、瀬戸内海の美しい島をピアノで作曲した者がいる。市政70周年記念の時には、「来島海峡をみつめて、未来に夢を」ということで、小中学生からふるさと讃歌の詩を募集して『来島』という組曲を作った。このように、民謡だけではなく、歌曲、新民謡、演歌と、地方色豊かな音楽が数多く今治にもあるわけで、このような音楽文化を、積極的、組織的、継続的に取り上げて、郷土の文化として定着させなければいけない。
 平成10年に来島大橋がかかる時に、郷土の民謡、芸能、新しい郷土の歌が、自信を持って紹介できるよう、準備しておくように、私は提案したいと思う。
 今日は、民謡グループの皆さんが木山音頭を踊ってくれるので、改めて郷土民謡の素朴なにおい・味わいを感じてほしいと思う。