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わがふるさとと愛媛学Ⅲ ~平成7年度 愛媛学セミナー集録~

◇重要文化財、真鍋家、豊島家

 国の重要文化財に指定された民家が県内に6軒あります。
 写真1は、そのうちの川之江市にあります真鍋家(まなべけ)。愛媛県内に現存する最も古い、約400年前の家と言われています。この家の価値は、戦前戦後まで、中予地方、南予地方で多く見かけられた、「田の字型」とか、「四間取(よまど)り」の農家の原型となる家で、昔の生活ぶりがわかることです。
 写真2は、松山市井門(いど)町にある重要文化財、豊島家(としまけ)であります。日本の木造建築の技術が最高の水準に達した時に建てられたもので、私がいろいろ見てきた中で、茅葺(かやぶ)きの家、民家の中でも最高の傑作ではないかと思います。これは全国に誇る建築文化財であります。
 ちょっとした武士よりも財力のある、この豊島家が茅葺きである。瓦葺(かわらぶ)きにするぐらいの十分な財力もありましたが、あえて茅葺きでその力を表現をする。構造自身は「八棟造(やつむねづくり)」と言われていますけれど、その構造の名称が「井門の八棟造」と、豊島家を示す名前になっているということは珍しいことであります。
 日本の建築が西洋と違う所は、飾りがないということです。西洋の建築は様式とか、飾りのための飾りというのがあるんですけれども、日本の場合は必然的に作られたものが織りなす美と言いますか。半間(はんげん)ごとに立つ柱に白い壁。それからこの屋根は、「四方(しほう)ぶた」という、中予地方特有の形なんですが、茅葺きの周りに、本瓦葺きの屋根を葺(ふ)く。これは川内(かわうち)町(温泉郡)から松前(まさき)町(伊予郡)にかけて見られ、おそらく戦前は、このようなスタイルの家が多々あったと思います。
 写真3は、藩主、あるいは巡見使(じゅんけんし)が使った、表座敷の「一の間」です。ちょっと写真ではわかりにくいのですが、この書院の下の板は、桂離宮(かつらりきゅう)に使っている技術と似ていて、この家を建てる時に、大工に相当な技術がある、あるいは修業をさせたということがわかります。
 現在の家の、薄く張った天井とか、檜(ひのき)の板を1mmか2mmに、ベニヤのように張った板は、指紋が付きますと、手の脂がしみとなって出てくるんですけれども、これは芯から木ですので、年々風格がでてくる。こういう家の文化というのが、現代ではないわけです。