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わがふるさとと愛媛学Ⅳ ~平成8年度 愛媛学セミナー集録~

◇もっと地域へ、もっと世界へ、もっと伝統へ、もっと未来へ

矢野
 今は、長い間の中央集権の文化から離れて、自分たちの足元を見直していくような時代に入っていると思うのです。ところが、人間には遠くのものほど価値があって、近くのものを評価しない「遠方志向」という習性があります。たとえは「パリヘ行っちゃってねえ。」と言うと、「宇和に来ちゃってねえ。」というよりも、皆が振り返ってくれるというような、そういう感じです。しかし自分たちの近い所を見つめ、そしてそれを組み立て直す。これが今からの時代に、特に問われているのではないか。そういう意味では、もっと地域へ、もっと身近な地域へという視点が問われています。ただそれだけでは地域独善に陥りますので、もっと世界へという視点が必要になります。もう一方で、もっと伝統へ、もっと未来へという4つの視点の中の行きつ戻りつの作業の中で、何か地域の独特なものが見えてくるのではないかと思っています。
 今日はそういう意味で、上田先生には、そういった未来とか、あるいは世界とか、非常に幅の広い御経験の中から、いろいろなお話がお聞かせ願えるのではないか、いわゆる外から見た日本、あるいは外の世界を教えていただけるのではないかなと思っています。
 そして後半は、地元の方々の、この町で展開される広範な生活の中から、「地域のことはわしが一番よう知っとんじゃ。このことについては、こんなおもしろいことがあるんぜ。」というような地域にかかわったお話を、発表していただけると思っています。
 私は砥部から来ましたから、宇和の住民ではないし、県外の人間でもないということで、世界と地域を結ぶ中間に位置して、内部でも外部でもない所から両方の橋渡しができたらいいかなと、思っています。
 それではこのあと、まず上田先生に御発表いただいて、それから対談という形に入りたいと思います。上田先生は建築家として、さまざまな町づくりや研究にかかわっておられます。本日は、その豊富な御体験の中から、地域研究のおもしろさとか、地域づくりのヒントなど、幅広いお話を、お聞かせいただけるのではないかと期待しております。それでは上田先生、よろしくお願いします。