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わがふるさとと愛媛学Ⅴ ~平成9年度 愛媛学セミナー集録~

◇地域学の意義

堀内
 あまり時間がなくなりましたので、まとめということで、生涯学習としての「地域学」の意義について、私なりにお話をさせていただきます。
 私は、現代詩というものを書いています。詩を書くということは、日常生活で磨滅している言葉をリフレッシュすることなのです。すり減って、輝きを失ったものをリニューアルして、新たな命を与えるというのが、詩をつくるということで、不器男の俳句もそうです。
 この俳人の俳句を今読むと、昔の物資流通の中継地として多様な豊かさを持っていた、彼の生地の松丸(まつまる)(北宇和郡松野町)の共同体の姿が蘇(よみがえ)ってくるのです。この行き交う街道筋のくらしの情景からは、もっと広げればアジア的な共同体に非常に深く連なった生産圏のサイクルといったものが鮮やかに浮かび上がります。不器男の想像力というのは、他のどこよりも、この川、この谷、この盆地に萌(きざ)す光の深みに潜んでいて、深い安堵(あんど)の息をもらすように西南日本の村の景観をとらえて、鬼北の霧の一粒のような美しい俳句をつくっているのです。
 その俳句からは西南日本の村の景観というものが、今読むと鮮やかに蘇ってきます。身近なものでいろいろなことが表現できる。その芽というものが地域には潜んでいるはずです。ですから後は、それぞれ、地域の方々が、それを発見して、育てていくことが地域学につながることなのではないかなと思います。
 前半の対談講演は、このあたりで終わりたいと思います。ありがとうございました。