データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

わがふるさとと愛媛学Ⅵ ~平成10年度 愛媛学セミナー集録~

◇西条祭りの文化財としての意義

 続いて、文化財としての西条祭りを考えてみたいと思います。
 まず、文化とはどういうものなのでしょうか。文化という意味のカルチャーという英語を、辞書で引きますと、文化・教養・教育という意味以外に、耕作とか栽培するというような意味もあるのです。したがって、文化というのは、ものをつくり、育て、伝えるということなのです。だから極端な話をすれば、ものをぶつけて壊すのは、まさに非文化的なことなので、昔は西条祭りでも時々喧嘩をして、だんじりや太鼓台をぶつけて壊していたようですが、最近はやらなくなったということは、今の西条祭りはまさに文化的になってきたといえるのです。
 次に、文化財については、西条市では文化財保護条例というのがあり、そこに詳しく明記されております。まず、第1条で、「文化財で西条市の区域内に存するもののうち、重要なものについて、市民の文化的向上に資すると共に、我が国文化の進歩に貢献することを目的とする。」と、文化財保護の意義をいっております。さらに、第2条では、文化財の種類が明記されています。まず、有形文化財というのがあります。例えば、西条では臨済宗保国寺(ほうこくじ)の仏通禅師座像(ぶっつうぜんじざぞう)などのように形として残る文化的価値のあるものです。2番目に、無形文化財というのがあります。例えば、もう亡くなられた刀工の高橋貞次さん(1902~68年)のように形として残りにくいものなどです。3番目に民俗文化財というのがあります。これには、だんじりなどのような有形民俗文化財と西条祭りのような無形民俗文化財があります。それから、最後の4番目に記念物というのがあります。例えば、貝塚や古墳とか、あるいは動物や植物などが入ります。具体的にいえば、市内の上喜多川(かみきたがわ)にある観音堂のフジは、県指定の天然記念物です。
 次に、文化財に指定するためには、どうすればよいかということです。まず、文化財に値するものを持っている所有者か、あるいはそれに関係する人が、これを文化財にしてくださいということで、文化財の申請書を教育委員会に提出することが必要なのです。そして、その申請書が出てきたら、教育委員会のほうから、我々、文化財保護審議委員会に「これを、文化財に指定していいかどうか。」という諮問があります。そうして、文化財保護審議委員会で審議した結果、承認を得られて、初めて文化財の指定を受けることになります。
 西条祭りを例にとると、祭りはすでに無形民俗文化財として指定されていましたので、だんじりそのものについて、4台を昨年(平成9年)有形民俗文化財として指定しました。西条祭りには、現在80台近くのだんじりがありますが、そのうち、建造されて最低100年以上たっているもので、文化的価値が高いものを選び、関係者から申請書を出してもらったわけです。
 参考までに、その4台を紹介します。まず、石岡神社奉納の「寺之下(てらのした)」。建造が安政2年(1855年)以前ということで、143年以上たっています。2台目は伊曽乃神社奉納の「古屋敷(こやしき)」。建造が天保11年(1840年)ですから、158年たっています。3台目は伊曽乃神社奉納の「紺屋町(こんやまち)」。建造された日付は不明ですが、江戸末期ということですので、100年以上たっています。4台目は伊曽乃神社奉納の「旧魚屋町(きゅううおやまち)」。建造が文久2年(1860年)ですから、138年たっています。
 こういう文化財指定に対する、市民の心構えも、市の文化財保護条例の第3条に「市民は、市がこの条例の規定に基づき行う措置に、誠実に協力しなければならない。文化財の所有者その他の関係者は、文化財が貴重な財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、できる限りこれを公開する等、その文化的活用に努めなければならない。」と規定されております。
 最後になりましたが、ものをつくるところに文化が生まれるわけです。そして、我々はそれを後世に伝えていかなければならないのですが、大切なことは、それをそのまま伝えるのではなくて、昔のことを重んじながらも、時代につれて変化していかなければいけないということを念頭において、伝えていかなければならないということです。そのためには、今日のこの愛媛学セミナーでやっているように、祭りの歴史とか、あるいは祭りに関する知識などを学び、伝統を重んじながら変化していく今後の祭りを考えていくことが大事だと思います。
 そういったことを考える参考になると思う本を一つ紹介しておきます。今年(平成10年)市内の吉本勝さんが出された『西条の祭り』という本で、博物館や図書館、公民館あたりにありますから、参考にして下さい。