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わがふるさとと愛媛学Ⅵ ~平成10年度 愛媛学セミナー集録~

◇川と人とのかかわり

守谷
 森下先生、どうもありがとうございました。
 あと、私に若干時間をいただきまして、その後、また、二人でお話をしたいと思います。
 今、森下先生は健康ということをキーワードにお話されたと思います。さらに、共に生きるということをキーワードに、川の中でもそれぞれ多様な魚が共に生きており、生かし生かされている関係であるということをお話くださいました。
 共に生きるということでいえば、川と私たち人間がどのようなお付き合いをすればいいのかという、今回のテーマにもあります「五十崎のくらし」というあたりが、もう一つの大きなポイントになるのではないかなと思います。つまり、五十崎のくらしも、川と共に生きてきたずいぶん長い歴史がありますので、そういった歴史を踏まえながら、今後どのようにお付き合いをすればいいかなということです。
 人間の生活が変化するにつれて、人が川からどんどん離れていったのですが、もう一度川のほうに帰るきっかけがあってもいいのではないかということがあります。例えば、ここ五十崎には小田川の川原で行われる大凧合戦という全国に誇りうるお祭りがあります。そういった川が生活に溶け込んだものがいろいろありますので、それをしっかり眺めながら、川の健康度をチェックする。そうすると、川が健康であれば、共に生きているのですから、我々も健康になりうるチャンスがあると思います。これも共に生かされ、生きている関係ではないかなと、私は理解しております。
 実は私は地域の方々とお話をする時には、川に大きなウェイトを置いています。その理由の一つとして、私は、地域のことを考える上で、川は非常に大事な一つの縦軸であると考えています。山には山のくらしがありますし、中流域にも町ができ、下流域には海上交通を利用して、臨海工業地帯といった形で海岸に大きな町が開けましたが、それらを山の原生林に近い源流あたりから、中流、そして海にまでつなげているのは川だけであり、そこに人々のいろんななりわいが点在しているということです。
 この縦軸の大事さと、もう一つ横軸と垂直軸という考えについては、専門領域として研究されておられる森下先生に、後で、かみくだいて御説明していただきたいと思います。
 昔は、源流に近い所にもたくさん人が住んでおりましたが、現在は、過疎化が進み、森を守る人が少なくなっているというあたりも、川が健康でなくなっている一つの理由ではないかなと、私は思います。
 最近、上流にある森林の荒廃で海の水質が悪くなり、それが生活に直接影響が及ぶようになるということが分かってきました。そこで、これは大変だということで、漁民の方々が大漁旗を山に立てまして、落葉広葉樹を植えに行くようになり、毎年それが行事化し、もう何万本も植えたという地域のお話をお聞きしまして、私は非常に感激しました。なぜかと言いますと、これは、漁村の方々が、自分の地域を守るためだけではなくて、川を媒介にして上流域に住む人たちのことを真剣に考えようということを実行にうつしたものだからです。私はこの動きがさらに広がって、中流域に住む方々も上流のことを真剣に思い、連携プレーで一緒にやろうじゃないかといった、川を通じた話し合いが、町村を越えてできれば素晴らしいなあと思います。