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わがふるさとと愛媛学Ⅵ ~平成10年度 愛媛学セミナー集録~

◇多自然型とか、「ワンド」工法ってなんぜ

 さてここで、特に他の河川工事では見られない、めずらしい試みを紹介します。それは、曙橋下流で行われた「ワンド」工法という河川工事です。
 まず、一般的な護岸工事を先に説明しますと、これは主に治水を考えたもので基本的には川の勾配を急にして、川幅を一様につくるので、水際が単調となります。また、土がありませんので、植物を含めて生き物が育たないのです。川幅は一様でコンクリートの水路のような単純な形をしていますので、水がその中をサッと流れ、水際の環境は単純となり、貧相で不安定な生態系しかできません。これに対して、「ワンド」工法は、川に瀬や渕をつくり、水と陸の接する所を不規則に広げたり、狭めたりして、川に変化が生まれるようにしてやりますので、多様で豊かな自然環境がつくり出され、とても安定した生態系ができるのです。このように、地域の風土にあった自然で豊かな川づくりを、多自然型(近自然型)工法ともいいます。この多自然型工法というのは、最近のはやり文句であり、森下先生のお話にでていました、新河川法の治水・利水・環境の中の、環境と呼ばれる部分に関係すると思います。その多自然型工法の中の一つが「ワンド」工法であり、少し川幅に余裕があるところは、本流とは関係なく、大きな石を低く積み上げた中堤防で仕切って、池のような小川のような空間をつくっていきます。このように「ワンド」工法でつくった川は、普段は稚魚や水生生物やトンボなどのすみ家となり、増水の時には魚やいろんな生き物たちの、かっこうの避難場所となっています。そして、自然の力によって、柔らかで無理のない、変化に富んだ緑の水辺ができています。