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わがふるさとと愛媛学Ⅶ ~平成11年度 愛媛学セミナー集録~

◇水車小屋の復元とホタル学習会

 会の運営は、結成当初から会員の会費で賄っております。それは「自分たちでできることは、自分たちの手で行う。」という会のモットーの下、独立的な活動をしたいという願いが根底にあるからです。
 まず何から始めようかと考えました。そして、自分たちが住んでいる地域が自然との共存が図られることを願って、水車小屋を復元しました。かつて、この石畳地区には数多くの水車があって、それを使って精米や製粉、製材が行われていました。しかし時代の変遷とともに、他の動力に変わっていってしまいました。水車を復元した当初は、「今ごろ水車を復元して、何になるのだ。」という声がありました。しかし、地区外の人々から「昔の懐かしい風景が残っていていいですね。」という声が次第に聞こえてくるようになり、そのことが地域の人々の理解を深めていくことにもつながりました。
 3基の水車が完成した後、「これを活用して何かイベントを開いてみてはどうだろうか。」という声が上がり、平成4年から「水車まつり」が開催されるようになりました。水車まつりには、石畳を思う会の会員だけではなく地域の人々もかかわり、総勢80名から100名にも上るスタッフで、石畳地区を挙げての催しとなっています。そして、水車まつりの開催において大切にしていることは、まつりのスタッフ一人一人が「させられているのではなく、任せられている。」という気持ちを持つということです。
 どのような事でもそうだと思うのですが、させられるのでは嫌になってしまうことがあります。しかし、人間任せられると、いろいろと考えて工夫をしたり、あるいは仲間と相談をしたりして、時にはいいアイデアが生まれてくることがあります。確かに、任せられるということは、いろいろな苦労を伴います。しかし、その苦労のなかから喜びが生まれて来るものだと思います。わたしは、水車まつりのスタッフにもその喜びを昧わってもらうことができればと思っています。
 石畳を思う会のその他の活動としては、ホタルの保護に取り組んでいます。これは、まずホタルの実態を把握するために、毎年5月初めから8月中旬までの約15週間をかけてホタルの観察を行います。また、ホタルについての学習会も毎年実施しています。ホタルを人に見せることを第一の目的としてホタルまつり等を行っているところもあるようですが、わたしたちの場合は違います。ホタルの生態を勉強して、ホタルを守ろうというのが、わたしたちが実施するホタル学習会のねらいです。それは、ホタルにとって生息しやすい環境が、わたしたち人間にとっても良い環境であると考えるからです。このホタル学習会も、今年(平成11年)で4回目を迎えました。ホタル学習会に、大人も子供も多くの人が参加してもらえたらと思っています。そして、ホタルに興味を持っていただくだけでなく、川の中の他の生き物や水そのものにも関心を持ってもらい、ゆくゆくは環境に優しい農業の在り方などにも学習が進めばと思います。また、ホタルの保護以外に、地域の自然を守るための植栽も行っています。
 以上お話ししてきました活動の資金は、すべて会員のきょ出金で賄われています。また、わたしたちは、活動に伴う労力については、ボランティアとか奉仕活動というとらえ方をするのではなく、地城への投資であると考えています。投資という言葉からは、株とか預貯金が思い浮かび、最後には手元に利益が返って来ることを連想しがちです。しかし、わたしたちは、自分たちに還元されるものが、形として目に見えるものではなく心の中で満足できるものであれば良いと考えています。