データベース『えひめの記憶』
えひめ、昭和の街かど-生活を支えたあの店、あの仕事-(平成21年度)
(4)鉄を鍛える技と心①
ア 鍛冶屋の技
(ア)材料の調達、切断
「材料は丸鉄(まるてつ)(丸い棒のような鉄)、平鉄(ひらてつ)を使います。作る道具に合わせて使い分けます。鍬を作るのなら、直径16mmか13mmの丸鉄を使います。材料は、内子(うちこ)の金物屋から買っています。それを作るものに合わせて切断します。」
(イ)火つくり・鍛造(たんぞう)
「切断した鉄を火床に入れて焼き、焼いた鉄をたたいて鍛えながら道具の形を作ります。何度も火に入れて繰り返したたくこと(鍛造)によって鉄に粘りがでるのです。燃料は、昔は松炭でしたが、今は主にコークスを使っています。火力を上げるために昔はふいごを使っていました。今は送風機を使います。火床の温度は1,000℃ぐらいになります。」
(ウ)鍛接(たんせつ)
「鉄と鉄、地鉄(じがね)と鋼(はがね)などを貼り付けます。間に鉄蝋(てつろう)(ホウ砂やホウ酸、鉄粉を混ぜ合わせた粉)という接着剤をぬり、赤く熱して打ちつけ、くっつけていきます(写真1-1-6参照)。」
(エ)焼き入れ
「打って形ができあがったものを赤く焼いて、水や油で急冷します(写真1-1-7参照)。特に刃物を作る時は、大事な作業になります。刃物の場合は、この焼き入れで良くも悪くもなるのです。経験と勘が勝負です。火の色で焼き加減や程度を判断しながら行います。」
(オ)仕上げ
「グラインダーで刃の形を整えたり、砥(と)石で刃を磨きます(写真1-1-8参照)。鍬などは柄(え)をつけます。柄にはカシの木を使います。この辺の農家の人は器用な人が多いので、柄は自分でつける人が多かったです。」
(カ)刻印
「作ったものに刻印を入れますが、刃物や高級なもの以外は入れません。うちは、蹄鉄を作っていたので馬の刻印を使っています。刻印を入れるのは作った人が品質や修理の責任を持つという意味があります。」
写真1-1-6 鍛接 大洲市河辺町。平成21年11月撮影 |
写真1-1-7 焼き入れ 大洲市河辺町。平成21年11月撮影 |
写真1-1-8 グラインダーでの仕上げ 大洲市河辺町。平成21年11月撮影 |