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愛媛の景観(平成8年度)

2 女たちの海

 生命の誕生よりこのかた、母なる海は女性名詞であるにもかかわらず、なぜか男たちの世界であった。海の生業(なりわい)をみても、常に男のロマンを駆り立てながら、「板子一枚下は地獄」であるが故に、女の立ち入りを拒んできた。
 本節の「小島のくらし」で取り上げた身近な漁村の場合も、女たちは陸(おか)にあって、食糧確保のために、段畑などの厳しい労働を強いられ、わずかに磯付漁業の採藻で登場するほかは、表舞台に立つことはなかった。
 このような漁業環境の中で、宇和島市の遊子(ゆす)漁業協同組合婦入部は、「海をきれいにする運動」の粘り強い取り組みを通じて、わが家のくらしを建て直し、地域の改善を進めてきた。長期生活設計の揺るぎない理念に支えられた婦人部の活動は、とりもなおさず遊子の女たちが歩んだ社会参加の歴史であり、地位を向上させる道であった。