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愛媛の景観(平成8年度)

3 ロマンを秘めた町並み

 「春霞のような伊予の町……が卯之町(東宇和郡宇和町)
 伊予人の気風は南にくだるにつれてのびやかになるといわれる。
 大洲の町をまわっているときも、私どものタクシーの運転手が無線の送話器をとりあげて他の車をよびだし、『私じゃ』といってから、『お城山で待っちょってやの(城山で待っていてくれ)』といった。言葉のぐあいがわけもなくおかしかった。
 私どもは大洲を離れて、南下している。とりあえず宇和町の卯之町をめざしていたが、この宇和といい、卯之町といい、地名の響きからして伊予は春霞のようにのどかである。(中略)私は奈良市の町屋を思いうかべながら、やはり仲之町(中町)以外に遺っていないかもしれないと思った。(中略)『目の色のちがった可愛い娘さんが、この露地をゆききしていた』というだけの伝承だが、土地でこういう話をきくと、いまそこにイネ(シーボルトの娘)が日和下駄を鳴らして歩いていそうに思える。ともかく卯之町は町並みといい、伝承といい、ものもちのいい土地である。(⑪)」
 宇和町の中心地卯之町は、中町のように江戸時代を残す旧道のたたずまい、明治末期ころにできた県道(商店街のにぎわい)、そして、昭和につくられた国道56号(激しく行きかう自動車)と3本の道が南北に並行して走っている。そして、それぞれの道が時代を語り、はっきり分離されている(図表3-1-7参照)。

図表3-1-7 南北に走る三本の町並み

図表3-1-7 南北に走る三本の町並み

実踏調査及び聞き取りより作成。