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愛媛のくらし(平成10年度)

(2)けいこ納め

 12月は、1年の終わりにあたり、それぞれの世界で、「何々じまい」「何々納め」が行われる月である。お華(はな)(華道)のけいこ納めについて、**さんに聞いた。
 「お華の場合、けいこ納めというのは12月の末です。と言っても、特別のことはしませんで、その年最後のけいこのときに、正月花を生けます。年末ぎりぎりの方がきれいな花が入りますので、なるべく遅くしています。
 生ける花は、お床にはめるお生花(しょうか)か、玄関や応接室にはめる自由花かということで、ある程度決まりますが、いずれにしてもおめでたいものを取り入れるようにしています。お生花は床の間に生けますので、規矩(きく)(規則)性があって、真、副、体(*39)という形をきちっと守って、約束事を踏まえたうえで生けます。一方、自由花は自分のイメージからの自由な発想によるもので、花器と一体になるものです。
 お生花ですと、松竹梅とか若松生花、オモト等、飾る場所によって和風、洋風と違ってきますが、お正月らしく華やかに生けます。私のところでは、床の間は松竹梅、若松生花等、すべての部屋にそれぞれ花を生けます。
 お華は感性が大切だと思います。感性は日々磨いていくものですけど、やっぱり美しいものを見て感動する心が感性につながっていくと思います。努力も当然大事ですが、心豊かな、感性の豊かな人の方が作品が生き生きしています。それは、お華に限らず何の芸事でも、道がつくものはすべてそうじゃないかと思います。好奇心を持って、何事をもいとわないといいますか、そういうことが必要なんでしょうね。
 花というのは、何の花でも野辺に咲いている自然の状態の花が一番美しいと思います。生け花は、その花を別のところに自分のイメージで生けていくわけですので、咲いている花にわざわざはさみを入れて切るからには、それ以上に、自分の創意工夫や思い入れの心で、その花に命を吹き込み、その花を生かしきることが一番大切じゃないかと思います。」


*39:生花における役枝のこと。江戸時代、生花の格式化が進められ、儒教思想を取り込んだ天地人三才格の花型によって定
  型化された。その結果、生花は、天地人の調和の姿をかたどるものとして、三つの役枝によって不等辺三角形を構成し、水
  際を一本にまとめた形式をとるようになった(⑰)。