データベース『えひめの記憶』
久万町誌
三 施設の特色
ア 意匠計画
敷地は、森林山草園用地を合わせると約一、七㌶である。周囲の杉木立とも良くマッチするよう、外壁は漆喰塗り柱現わしとして、腰板を設け、屋根は、いぶし銀の瓦葺とした。回廊には円柱の手すりを設置、展示室には越屋根を設けて自然光を取り入れるようにしている。
自然の地形を出来るだけ残して造成し、ロータリーから一段高い所に本館を配した。
素朴な切妻の木造美術館は、静けさの風景に落ちつきをただよわせている。
イ 平面計画
美術館の象徴的空間であるエントランスホールは、それぞれの使用目的空間に明快に導く動線処理の起点である。出来るだけゆったりとくつろげる広い桧の板ばり、大きな窓を設けており外の景色をながめることができる。
展示室は、第一室と二室が日本画・書用に、第三室と四室が日本近代用画用に、そして五室が陶磁器展示用に作られている。一室と四室の間に移動壁を設けており、企画展示など、目的に合った展示も可能にしている。展示ケースは、無色透明のミュージアムグラスを使用、作品の生の色彩が観賞でき、また、紫外線力ットの照明を用い、照度も自由にコントロールできるようにしている。床はジュータンを使って吸音に気を配った。
事務学芸員室、館長室などの施設管理、研究部門は、収蔵庫側に集中して設けた。
収蔵庫は、外からの防火に対応して鉄筋コンクリート造りとし、その壁面から三〇センチ程度はなれた内側に杉板と調湿板で囲って部屋を設けている。その壁の間の空気をゆるやかに循環させて湿度をコントロールさせる。
芸術品をいためないためには、動線を、最短でしかも直線に結ぶと良い、収蔵庫と展示室の間をそのように努めたが、床面積要件や木構造上思うところに思いどおりの空間が取れず、廊下の角が出来た。