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わがふるさとと愛媛学Ⅵ ~平成10年度 愛媛学セミナー集録~

◇熊野古道との出会い

小山
 御紹介いただきました小山です。私は、熊野古道についてお話しようと思うのですが、まず最初に、なぜ熊野古道に関心を持ったかということから始めたいと思います。
 私は、20数年間、和歌山大学で日本中世史、特に中世の荘園の研究をして参りました。そして、同じころに神戸大学に戸田芳実という、大変有名な中世史の先生がおられました。戸田先生は、数年前に亡くなられたのですが、山登りを趣味とされた方でして、その延長線上で古道の研究に入られたのです。
 その戸田先生から、最初に熊野古道を歩くお誘いをいただいたのですが、当時私は和歌山県史を初め、県内のさまざまな市町村史にもいろいろ関係しておりまして、どちらかというと、熊野よりは、高野山など紀州でも北のほうに興味を持って研究をしていたのです。ところが、戸田先生に「熊野を知らないで紀州が論じられるか。」と言われまして、「やはり南のほうも行かなければいけない。」と思い、連れて行っていただいたというのが熊野を歩き始めた機縁です。これが文化庁が熊野古道をいち早く「歴史の道」に指定した昭和53年(1978年)でしたので、もうかれこれ20年も前になると思います。
 しかし、当時私は、山の趣味がなかったものですから、実はこわごわ行ったのです。というのは、平地なら農村の調査はよくやりますので自信はあったのですが、山道はあまり自信がなかったのです。それでも行ってみますと、私でも行けるということが分かって参りまして、その後、私は戸田先生と他のいろんな古道の調査もいたしましたし、単独で学生を連れて行ったり、あるいはお年寄りの方々を連れて行ったりもするようになりました。また、最近は熊野だけではなくて、各地の古道もできるだけ歩くようにしております。私の古道歩きや古道調査というのは、私の研究の中ではやや趣味的な要素が強く、健康の維持を兼ねたものです。