データベース『えひめの記憶』
愛媛県史 社会経済1 農林水産(昭和61年1月31日発行)
三 四国カルスト草地開発事業の概要
事業の地域
愛媛県東宇和郡野村町
〃 上浮穴郡柳谷村
〃 〃 美川村
高知県高岡郡 梼原町
〃 〃 東津野村
地域の概要
当地域は愛媛県南東部と高知県北西部の両県境に接する二県五町村にまたがり、四国山脈を中心として展開する四国では珍しく広大な高原で、部分的に特異なカルスト地形を形成している。団地は大川嶺、大野ケ原、女鶴・五段の三団地からなっており、標高は一、〇〇〇m~一、五〇〇mで大野ケ原、女鶴・五段の団地にはカーレン、ドリーネが点在している。
このような大高原とカーレン地帯の自然景観であるため、愛媛・高知両県の県立自然公園となっている。
カルスト地形・・石灰岩台地が雨水や地下水の化学的浸食を受けてできた地形をいう。カルストの名はユーゴスラビアのカル
スト地方に由来している。
カーレン ・・石灰岩が溶食によって溝状にうがたれて地表に露出し、林立した状態のもの。
ドリーネ ・・石灰岩地帯に見られる鉢形の窪地、落ち込み穴をいう。雨水の溶食作用によって、地下の石灰洞が広がり、地
表面が落ち込んで生じたり、地表の割れ目にそって生じる。
事業の目的
当地域の兼業農家率は高く、なお過疎化とともに兼業化の進行している現状から農業経営の安定を図るため、畜産部門をとり入れた種々の施策が進められているが、最近の多頭化の傾向に対応して、畜産経営の安定的拡大を推進するためには、粗飼料生産基盤開発の必要性は大である。
そこで、営農基盤の整備と労働生産性の向上を図るため、県境一帯にある未利用原野のうち五四七haを牧草地化し活用することにより、乳牛一、四二〇頭、肉用牛六八五頭の放牧預託育成を行うほか、越冬預託育成(乳牛二一○頭)の牧草供給も行い、より高度の牧場経営の確立を図ると共に地域農業の振興と農家経営の安定に寄与させようとするものである。
全体事業計画
次表3-20を参照。
草地造成
造成地の大部分は、カルスト地帯特有のカーレンが無数に露出し傾斜度も15°~35°が八〇%を占め、また多雨地帯(二、六〇〇~三、○○○mm)でもあることから、不耕起耕法を採用し、施工は能率化を図るため、除草剤・土壌改良剤・種子などの散布はヘリコプターを使用した。播種牧草はカルスト高原の自然条件に適し、かつ嗜好と栄養価に優れたオーチャードグラス・クローバー・イタリアンライグラスなど六種類とした。
幹線道路
各団地と既設道路とを結ぶ幅四mの幹線道路は九路線、延長三〇㎞(うち燧道〇・一四m)に及び、建設は急峻な山嶽地形と石灰岩、火山灰土の軟弱土質に加え、多雨・高寒冷地の劣悪な気象条件の中で工事を進めた。又路面の保護、維持管理などの向上及び草地管理の適正を図るため、簡易アスファルトを施行した。